借金返済への道 ~第3話 連帯保証人の罠~

こんにちは、オレ日記のゆーきです。
連載もあと2回くらいで終わりますので、もう少し我慢してください。
借金返済への道 ~第1話 借りてはいけない?~
借金返済への道 ~第2話 恥ずべき日々~
社長に連れられて行った先は、H駅のガード下にある小さな建築事務所。もうこの頃はお金を借りる事にウンザリしていました。自分でお金を借りるよりも、保証人となった方がまだ気分的にも楽だったのを覚えています。なので印鑑証明も住民票も文句を言わずに用意しました。

※画像はイメージです
社長の友人に借りたお金は500万円でした。用意されていた借用書の連帯保証人欄にサインをし押印しました。そして免許証のコピーを渡し、役場で取ってきたばかりの印鑑証明と住民票を渡しました。住民票を渡す際、それに記載された家族の名前を見た時、オレは少し躊躇しました。お金を借りる為に家族を売っているような気分になったのです。
連帯保証人になったのには理由があります。もちろん第一には、アルバイトの給与を確保しないといけなかった事。そして第二に、社長の父親も同行して連帯保証人になった事。そして第三に、自分自身で会社の入金状況を把握していたので、入金の流れから毎月50万円の返済は可能と判断していたからです。なので連帯保証人になるリスクは低いと思っていました。
それから月末ごとに、間違いなく社長が返済しているか直接電話して確認していました。そして社長の友人の返事を聞いて、胸を撫で下ろしていました。これであと9回で終わる…。これであと8回で終わる…。これであと7回で終わる…と。連帯保証人という鎖から開放される日を毎日心待ちにしていました。
連帯保証人になって4ヶ月目。会社の経営も徐々に順調になってきた頃、営業に行っていたオレの携帯に知らない番号から着信がありました。電話の相手はYと名乗る男性で、その男は冷静さの中に怒りが満ちた声で、オレに衝撃の事実を告げました。
「もしもし、○○社長が自己破産したのだが、あなた連帯保証人だったよね?」
“自己破産” その言葉を聞いた時、一瞬だけ呼吸の仕方を忘れました。その後、急に夜になったかの如く目の前が真っ暗になりました。しかしまだ何が起きたのか理解出来なかった。やっと会社にも希望を持ち始めた時期に、リアルな現実が待ち構えていたのです。
そしてオレはH駅のガード下の建築事務所へ向かった。
そこでオレは更なる衝撃の事実を知る事になる。社長が自己破産して夜逃げした事、社長の父親も自己破産をした事、500万円をオレが支払わないといけなくなった事、社長の友人というのは社長の嘘だった事、その人はヤクザだった事、この建築事務所は見せかけで本当はヤクザの事務所だった事、利子はトイチだった事、社長が支払っていたのは利子だけだった事、しかもその利子も3回しか支払っていなかった事、そして500万円は利子で1100万円に増えていた事。
「1日だけ考える時間をください…」
突然の告白にオレの思考回路は完全に停止した。放課後に校門で待ち構えていたクラスの女子に告白されるのは大歓迎だが、こんな告白は本当に迷惑以外の何者でもない。頭の中が真っ白になると言うが、これがその事だと知った。本当に頭の中が真っ白になった。

※画像はイメージです
会社もこれで事実上の倒産。オレに残ったのは消費者金融から借りた130万円と10日で1割の利子が加算される1100万円。給料すらロクに貰っていないのにどうやって支払える。答えは簡単だった。自殺するしかない。
会社の事務所を借りていたビルは8階建てで、屋上の鍵は壊れていて自由に出入りが出来る状態になっていた。気分が乗らない日は仕事をサボって、この高い場所から道行く人々を眺めていたものだ。
“このビルから飛び降りる” そう心に決めたオレは柵を乗り越えた。いつもここから見ていた景色も、この日はいつもより高く感じた。きっと恐怖心がそう見せたのだろう。でもこの高さならきっと確実に死ねる。飛び降りている最中に失神して楽に死ねる。もう覚悟は出来ていた。生きていく事の方が怖かった。
しかももっと怖かったものがある。それはオレが死んだ後の世界。オレが死んだ後、残された家族はどうやって生きる。オレは死んだら楽になる。しかしオレが死んだら残された家族は苦しむ。それを考えると、オレは死ぬ方が怖くなった。
その夜は恐怖に震えて眠る事が出来なかった。死にたい願望と、生きなければならない現実との葛藤に震えていた。ある日突然背負う事になった1100万円、それを考えると死にたくなる。そしてオレはアイスピックを握り、ベットの上でまた自殺しようとした。アイスピックで眼球を貫こうとしたのだが、恐怖からか先端は眼球を避け、こめかみを深く傷つけた。今でもその傷は残っている。
目を突いて死ねるわけも無い。しかし眼球からも反れたアイスピック。こめかみから流れる温かい血液と激しい痛み。怖くて刺せなかったのではなく、生きなければいけないと身体が判断したのだろう。
だからオレはもう少し生きてみようと思った。
<次回へ続く>




